いなべFM第118回令和7年12月26日放送「みんなで支える幸齢社会」について
いなべFM第118回令和7年12月26日放送「みんなで支える幸齢社会」

115~118回の全4回は、在宅診療クリニックの「しんじょう医院」院長の新城拓也さんにお話いただきます。
最後回は、この番組のタイトル「みんなで支える幸齢社会」をテーマにしたお話です。
いなべの温かさの思い出

2002年から神戸にある緩和ケア病棟(ホスピス)で働き始め、10年間、がん患者さんをずっと診察していました。2014年に在宅診療クリニックを開業し、神戸市内で在宅医療の、時々、神戸の市民病院で緩和ケアの仕事をしています。
患者さんは自分の病気を知り、家族と一緒に、病気とどう向き合っていくかを話し合い、そして人生の最後を考える。がん患者だけではなく、あらゆる病気の人、病気でない人も含めて、高齢者には「自分の人生の最期は自分で考えてほしい」というメッセージを出し続けたように思います。つまりは自分ファースト、自分の人生は自分で決める。これは、以前の医療や社会の体制の反動とも言えます。
医療従事者も研修会等を通じて、患者さんとの接し方や、患者さんの生きる権利、生き方というものをどう支えるかという視点で繰り返し勉強し、病院内の患者さんと医療従事者との関係や、医療従事者の患者さんへのまなざしも随分と変わってきたように思います。
しかし、長年やってみると、いろんな問題点にも気づくようになりました。今、神戸ではひとり暮らしの高齢者が増え、さらに、高齢者のふたり暮らし、もしくは家族と同居している高齢者がほとんどいない状況です。ひとり暮らしの高齢者は、自分の力で暮らせなくなると、病院や施設に移っていきます。
そこで、医療従事者は何度も、これからどうするのか、と確認します。ひとり暮らしの高齢者にとって、遠方の子どもたちと話す機会もなく、地域との関わりも少ない神戸では、近所の人たちが一緒に考えてくれることもありません。どうしたいかと聞かれても、何も答えることができない、もしくは一緒に考えてくれる人がいないといった状況にあるからです。
在宅診療クリニックを始めてから12年経ち、高齢世帯の夫婦のどちらかが何らかの病気で亡くなった後、ひとりになった高齢者を診るということが徐々に増えました。ひとり残された高齢者をどのように支えていけばいいのかいつも考えさせられます。訪問介護員、看護師、医師、理学療法士など関わる人を増やし、デイサービスも活用して、遠方の家族と何とか連絡を取り合いながらやっていますが、やはり限界があります。そういった高齢者に、これからどう生きるか、もしくはどう死んでいきたいかということを聞いても、ほとんど返事がなく、「先生に任せるわ」としか言われません。しかし、任された医師にも、どのように最期を支えれば良いのかという手立てが、徐々に少なくなってきたように思います。
今、急性期の病院では長期入院ができなくなり、別の病院に転院することがほとんどです。施設に入ったとしても、金銭面の負担により、長くその生活を続けられない人もいます。病院を転々としているうちに、医師と患者さんとの関係は随分希薄なものになっていると思います。員弁厚生病院で働いていた2000年頃を思い出すと、いなべ市は、名字を見れば住んでいる地域が分かると言われるように、地域に同じ名字の人ばかりで、訪問診療をしていた時も、近所の人たちが、その家のことをよく知っていました。そして同居家族も多く、広い敷地に母屋と離れと複数の世帯があり、別居していたとしても、近い地域に子どもたちが住んでいたように思います。
振り返ると分かるのですが、人の最期の決め方や死に方というのはひとりで決めるものではありません。周囲の人たちとの人間関係の混ざり合いの中で、何かしら「こうしていくのが良い」ということが見えてくるのが、人間の本来のあるべき姿なのではないでしょうか。今の神戸で、やや冷たくなってきたなと思う医療の中で、当時のいなべの温かさをよく思い出します。
まとめ
115~118回の全4回の放送を通じ、23年経った今でも、若いころに働いたこのいなべ市のことを忘れず、応援してくださる新城先生に大変感謝いたします。
*インタビューの内容は趣旨を変えない程度に編集しています
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