いなべFM第115回令和7年11月14日放送「がん告知」について

ページ番号1015227  更新日 令和7年12月10日

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いなべFM第115回令和7年11月14日放送「がん告知」

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115~118回の全4回は、在宅診療クリニックの「しんじょう医院」院長の新城拓也さんにお話いただきます。新城先生は1998年から2002年までの4年間、員弁厚生病院内科医師として勤務されていました。その後、神戸中央病院の緩和ケア病棟で10年勤務されたのち、緩和ケア専門の在宅診療クリニックとして、しんじょう医院を開業され、ご活躍中です。全4回にわたって、いなべ市で医師として働いてきた時代を振り返りつつ、時代とともに変化した医療のなかで、大切なことは何かなどについてお話していただきます。第1回目は、がん告知についてのお話です。

 

真実を伝えていなかった時代

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私は今から25年前に、員弁厚生病院で働いていました。その頃は内科医として働いていたので、入院・外来ともに多くの患者さんを診ていました。当時のことを振り返ってみると、非常に医師の力が強い時代で、患者さんたちが小さくなっているという状況でした。治療法を選ぶときも、医師が選んだものを患者さんが受け入れ、何と病名を伝えるか、まず家族に相談してから、どういう嘘を話すかなど、患者本人が大事な病気、病状や病名のことを知らない、そういうことがまだ普通の状況でした。

2000年前後から、患者さんたちに真実を伝えた方がいいのではないか、ということが盛んに議論されるようになりました。比較的地方にある員弁厚生病院でも、少しずつ状況が変わってきたころに、まだ若い私が働いていたということになります。周りのベテラン看護師に支えられながら、どうにか治療や病状を説明していました。今から思うと、説明の仕方や、どのような手順で悪い知らせや病名を伝えればいいのか、十分に教わっていなかったので、随分多くの人たちを傷つけてしまったのではないかと思います。

患者さんたちが自分の病名や病状を知る権利を得るようになり、病院と患者さんとの関係も少しずつ変わってきたように思います。2002年ごろに、私は神戸に移ったのですが、当時の神戸ではもうすでに、病気について初めて会った医師の診察で、突然説明されるといったような驚くべき状況でした。2002年以前の員弁厚生病院では、あれほど悪い病気を伝えることに慎重になり、嘘までついて患者さんを傷つけないようにしていたのに、一方、神戸では、医師が前ぶれもなく“がんですよ、あなたは”と言っているような状況で、非常に驚きました。当時、神戸で行われていた説明の仕方が、徐々に全国に広がっていき、今はこの地域でも普通になっているのかもしれません。しかし、少し前までは、病気についてどう嘘をつくか、医師や看護師もみんなで相談をしていたのです。そこにあったのは、相手のことを傷つけたくないから嘘をつく、家族には本当の病気のことを伝えることで、患者さん自身を傷つけたくないという、優しさや思いやりがあったように思います。あの時あった思いやりや優しさというのは、今はほとんどなくなり、患者さんとの関係もずいぶんあっさりと冷たいものになってしまったなとも感じています。わずか25年の間に、病気に関する伝え方がずいぶん変わったなと思う反面、何か大事なものが無くなっていっているのではないか、そんなふうに考える時もあります。

2000年ごろから、もう少し思いやりを持って悪い話を伝える方法がないかと探し始め、今に至ります。

 

まとめ

引き続き、次回も「緩和ケア」について、しんじょう医院院長 の新城拓也さんよりお話いただきます。

 

*インタビューの内容は趣旨を変えない程度に編集しています

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